” 雲の峰いくつ崩れて月の山 ” 芭蕉
鶴岡の駅で降りた時、ほんとうに月山の頂上に雲の峰が立っていた。八月の半ば過ぎ、山は濃い群青で、牛の背のようにゆったりと伸び
ていた。どんな山でも頂上のあたりはいくらか鋭く立っているものだが、月山にはそれがない。撫でたような緩やかな線であった。ある六
月の末、私は山形市の北のはずれから、やはり月山を眺めた。月山だけがまだ雪を置いていたので、すぐに私の眼を捕らえた。雪のせい
か、山は威のある強い線を示していた。 「日本百名山」より BGM : ドビュッシー作曲 「月の光」